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軽々しく絆と云いたくない。 [雑感]

「おや、熊さんお久し振りです。相変わらずお忙しいようで。営業所周りですか」

「こんにちは。それほどでもないんですが、今月は忙しくなります。うちは決算が三月ですから」

「谷間のご隠居はお元気ですか、最近お会いになりましたか」

「この間お目にかかりましたよ。カメラ持って歩いているんだから暇なんだな、お茶を飲んでいけと云われまして。

 それがですね、アメリカはカリフォルニア産のオレンジをご馳走になりました。
 ご隠居にオレンジは似合いませんね、と云ったら、今年のミカンは旨まくない、しかも値段はバカ高い、オレンジは安くて甘いぞ、安くて旨くて毒が入っていなければどこの国のものだっていい、とおっしゃっていました。
 小振りでしたが甘い甘い、甘かった」

「ご隠居、なにか云っていました? そうそう、政治向きの話は馬鹿らしいからしないと前におっしゃっていたんですよね」

「今回はしょっぱなから聞かれましたよ。熊さんは「絆」って知っているかって。最近よく云われている絆ですね、流行語大賞でも騒がれたと云ったら、寂しそうな顔になりましたよ」

『マスコミでも盛んに「絆、絆」って云っているが、わかっていっているんだろうか、疑わしいね。

 絆は切っても切れない人と人との結びつきなんだよ。綱で結び合うことなんだよ。考えてみれば日本国民全部が結び合っていると考えるほうが馬鹿なんだよな。
 東日本大震災のことも温度差がある、当たり前か。
 被災された方々を助けようとみんな頑張っているが、やろうという心は絆があるからか。絆は昨日今日会って出来るもんじゃない。親、兄弟、生まれ育った土地との結びつきだよ。
今、人々を突き動かしているのは一時的な同情、哀れみではないのかな。なにがあっても切れない繋がり、それがあるか? 生命に変えてもやってやろうという思いがあるか? 人それぞれだよ。それは責められないよ。

 被災地の復興に大きな影響がある瓦礫の処理を日本全国でやってほしいといっても、今のところ東京都と山形県、秋田県だけじゃないか。検討すらしていない県がいっぱいあるそうだね。
 放射能が危険だ、測定し安全だと云ったって嘘を云っているんだろうと、引き受けたくないんだよ。今まであまりにも隠したり嘘を云ったりしてきたからな。絆、絆と云ったってそんなもんだよ。他人ごとなんだよ。自分が可愛いんだよ、人間は。石原都知事は好きじゃないが、この件だけはいいね、力があるんだろうね』

「ご隠居、じゃあ絆は赤の他人の間ではできないものなんですか」

『いまお互いに一生懸命やっているよな、手助けしているよな、いろんな形で。やっている人たちはやっている。そして何年か経ってみな、一生懸命やった人同士の間には絆が出来ているから。いま絆をつくる準備行動の真っ最中なんだよ。そんな時あたかも全てに絆が存在するようなことを云うから俺は面白くないんだ』

「被災された方々とお手伝いしようと頑張っている人たちの関係が絆で結びついていないのなら、なんですか?」

『ウーン、俺もよくわかんねえけどあえて云えば「連帯」ではないかな。同じ日本人だ、手をとりあってやっていこうという。あるいはとにかく大変な被害に合われたんだ、なにか手を差し伸べなければという思いだろうね。

 熊さん、もし地球上に人間がいなかったらなんて考えたことあるか?
 地球上で悪さをしているのは人間だけだ、土に帰らないものを作ったりして。暑いから冷房?、寒いから暖房?神さまもとんでもない生きものを創ったものだ。人間以外の生き物は環境の変化で死に絶えたな。あるいは進化した、と云っても自分の身体で。人間はどうだ、自分を変えよう、進化させようとしないで周りを変えてきた、すべてを支配することができると。

 昔は、水は三尺流れればきれいになる、と云ったものだ。それがなんだ、浄化しなければ飲めない水?なにが科学の進歩だ。下水処理場は何のためにあるか考えたことはあるか、熊さん。
 東京に上水道も下水道もなかったらどうなるだろうね、とても住めるところじゃないと人は集まらないだろうよ。一極集中にならなくていいんじゃないかい。

 梅も桜も咲くだろうよ、今年も来年も、もっと先も。人間が悪さをしない限りは。

 地球にとって、人間は早く絶滅危惧種になればいいんだ。日本は一番早く指定されるかも知れないね。だろう、子供が生まれないんだから絶滅するよ。経済発展ばかり云って来たから神様が怒ったんだよ』

「支離滅裂なことを云っていました。そろそろ認知症が出てきましたかね?
 云っていることがわからないところばかりだったんですが、もうすぐ3月11日。みんな一生懸命なんだ、必死なんだ、それを軽々しく「絆、絆」と空のお題目みたいなことは云わないで欲しい、今一生懸命やっている人達の間に絆はあるかも知れない、ないかも知れない。今はないとしても出来るんだ、これから出来上がるものだ、それが次に繋がるんだ、と云いたかったようです。
 オレンジを食べながらの聴講は、疲れました」


 ご隠居さんの話が長くなりましたので、きょうは写真はお休みです。
 変なご隠居のご意見ですので、きょうは「ひとこと」欄は閉じます。
 わたしの生まれ育ったふる里は幸いなことに人的被害もなく家屋の倒壊もありませんでした。そこに住まいする兄は、(その時一番の震度だったのですが)津波さえなければ、と繰り返し云っています。比べようもないのですが、津波に合われた人々と比べたらかすり傷だと云っています。
 まだ多くの方が行方不明です。
 一日も早く復興されますように。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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